劇作家の宮沢章夫とエレキコミックのやついいちろうが平常心ブラザーズを結成していることを知っている人はあまりいないかもしれません。
平常心ブラザーズが結成されたきっかけは2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。
震災後まもなく2人は平常心ブラザーズを結成し、ラジオ特番で平常心の大切さを説き、いくつかのエピソードを披露しました。
そのときのレポートを書いていたのでここに記録しておきます。
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---ここから2011年3月30日に書かれた記事の転載です---
『やついいちろうと宮沢章夫の「ラジオ平常心」どうぞ~!』レポート
2011年3月22日のInterFM『桑原茂一のPIRATE RADIO』は、特別緊急番組として『やついいちろうと宮沢章夫の「ラジオ平常心」どうぞ~!』を生放送。2人は平常心ブラザーズを結成し、「今は平常心が大切である」と説きながら、身の回りの人たちに関するエピソードトークを平常心で披露し合った。
そして、これがめちゃくちゃ面白い。
特に劇的な出来事が起こっているわけではなく、日常の中で静かに生まれた言葉や行動を掬い取り、面白がる。笑いとは視点である、とも言えるかもしれない。
その中でも1番笑ったのがこのエピソード。
宮沢 牛肉偽装事件ってあったじゃん。日本産の牛肉だって言って。
やつい シールを張り替えて、はい。
宮沢 それで、「金、返せ」ってみんなスーパーの前に集まってきちゃって。買ってもいないやつが集まってきちゃったっていう事件があったの。
やつい はい。
宮沢 それをニュースで見てたんだよ。明らかにヤンキーと思しき若者がインタビューに答えてて、「よくこちらで肉は買われるんですか?」って質問に彼が答えたのが、「結構、肉、好きなんです」って。
やつい アハハハ。面白いなあ。
宮沢 オレ、ひっくり返りそうになっちゃって。
やつい なんでその人にインタビューしたんですかね。
宮沢 もう、悪意だよ。いろんな人にインタビューしたと思うんだよ。
やつい だって、お母さん方もいたでしょうしね。
宮沢 ホントに買った人たちね。
やつい フフフ、「結構、肉、好きなんです」(笑)。
ヤンキーが素直に答えているってこと自体の面白さ。そして、「肉を買うのか?」という質問に対してイエスの代わりに自分がどういう人間かを説明するという答えのチョイス。意図したものではない笑いは、ときに意図したそれを凌駕する。
そして、「当たり前のことを言う」ということは面白いという話。
宮沢 これ話すと本人が激怒するんで名前は言いませんけど、「電気をつけると明るいね」って言ったやつがいるんだよ。
やつい ハハハハ。
宮沢 すごいこと言い出したなってね。またあるときに、80年代の半ばにRUN DMCがNHKホールに来たんです。そのときに彼が観に来てて、すごいいっぱいいたんです、人がね。(略)そのときに、彼が僕に会ったとたん言った言葉が「人が大勢いると混雑するね」って。
やつい アハハハ。辞書じゃないですか、ただの。
宮沢 びっくりした。
やつい 面白いですねえ。
宮沢 聴かれたらまた怒られるな。
やつい また怒られますね。
他にも、パン自殺を図った親戚のおじさんの話、「刺青のある方の入店をお断りします」と張り紙のあるサウナに刺青の人がいたと思ったら、その店の経営者だった話など、宮沢さんの話が大半を占める中、話題は去年2人が一緒にやった舞台の話へ。そこで出会ったある役者について。
やつい あるとき、楽屋でよく分かんないクリームをね、何にも書いてない、軟膏とか入ってそうなケースの白いクリームを顔にめっちゃ塗ってるんですよ。みんな見てて、「何塗ってるの?」って言ったら「分かんないっす」って言うんですよ。
宮沢 ハハハハ。そう、「分かんないっす」って言ったんだよね。
やつい 「ええ!?」ってなって。「分かんないクリーム、塗ってるの?」って言ったら、「そうです」って。(略)みんなで止めたんですから。「分かんないの塗っちゃダメでしょ」って言って。「どうしたの、病院でもらったの?」って言ったら、「いや、家にあったんです」って。
宮沢 そうそう。
やつい 「家にあった白いクリーム、塗っていいの?」って言ったら、「薬の棚に入ってたんで」って。「いやいやいや、薬の棚に入っててもダメなのもあるし、それすげえ量を顔に塗ってるし、大丈夫?」って言ったら、「いや、大丈夫でしょ、白いし」。
宮沢 ハハハハ。
やつい 「白いしって何? 白い毒もあるでしょ!」って言ったら、「なんでそんなに言うんですか!」ってちょっと怒って。宮沢さんが(そのクリームを)隠すことでやっと止めたんですから。
宮沢 良かったね、隠して良かった。隠さなかったら大変なことになってたね。
やつい 塗らなくなってからは、もう絶対塗らないんですよ。そのあと何回言っても塗らないんですよ。「初日、2日目塗ってたじゃん、今日、塗れよ!」って言っても、「いや、塗らないです!」って言って、「なんで?」って言っても、「分かんないっす」って。
宮沢 フハハハ。何をしても「分かんない」。
やつい 全部、「分かんないっす」。
こんな時だからこその平常心。いつもの日常。ちょっとしたことを面白がれる心。
不謹慎とか不謹慎じゃないとかがどうでもよくなるくだらなさが確かに存在している。放送中に桑原茂一さんも言っていたけれど、これ1回きりにするにはもったいない。
今日も平常心ブラザーズが待ち遠しい。
---ここまで2011年3月30日に書かれた記事の転載です---