先日ゾフィーの単独ライブを観た渋谷ユーロライブの上、ユーロスペースにて玉田真也監督の映画「あの日々の話」を観てきた。これがゾフィー単独に引けを取らない面白さだった。今、面白いものはすべて渋谷のあの建物でアウトプットされているのだろうか。そうなると7月9日に渋谷ユーロライブで開催される「ザブングル加藤劇場」に俄然興味が湧いてくる。
そんな話は置いといて「あの日々の話」、傑作だった。カラオケ店で開かれた大学サークルの代表選挙の二次会。元代表であるOBとその彼女(OG)、現役生ら男女9人が先輩と後輩、男と女、童貞と非童貞、男女間の友情あり得る派とあり得ない派など様々な対立構造を背景に交わされる会話から成る群像劇。
※この後、若干のネタバレがありますのでまだ観ていなくて気にされる方はご注意ください
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あまりにリアルな会話の数々に「これが本当に台本という形で存在していた(紙の上で文字という状態だった)のか」と思ってしまった。居酒屋で隣の席から漏れ聞こえてくる会話に実は台本があった、と想像してほしい。それくらい普通の、そして面白くない会話なのだ。面白くない会話の再現性に面白さを感じてしまうというパラドックス。そして、それらの会話を聞いている内に登場人物たちのキャラクター、思惑、関係性を布に水分が染み込んでいくように理解させられていくのが心地よい。一夜漬けはすぐに忘れてしまう、の逆で徐々に浸透していった登場人物たちが映画を観終わって数日経つ今も脳裏で生き続けている。とりわけ強く印象に残っているのが長井短演じるフミだ。1年生であるフミはOGに呼び出され理不尽な頼み事をされるのだが物怖じせずに断り、OGとの言い争いに発展。気の強い、扱いづらい女子かと思うとその裏には友だち想いの信念が隠されていて、いざ蓋を開けてみると周りに気遣いができる純粋で優しい子だった、というギャップに完全にやられてしまった。フミだけでなく「あの日々の話」で玉田真也が生み出す登場人物たちは大小はあるがギャップを見せてくれる。1年生を説教する厳しい先輩が実は女の子に対しては奥手であったり、どんなことでも受け流してしまいそうなほんわかした先輩が倫理観については一番敏感で厳しかったり。そういったギャップを見せつつ先に述べた巧みな会話を成立させて、同時に物語を進行させていく。その結果として観客それぞれが持つであろう「あの日々」を想起させることにも成功している。
結論。玉田真也は凄い。(語彙力)