2019年5月8日(水)に放送された「水曜日のダウンタウン」を観て感動してしまった。1時間のテレビバラエティーにあれほど釘付けになったのはどれくらいぶりだろう。企画自体の斬新さ、以前に厳重注意を受けた芸人拉致企画へのカウンター性、隅々まで練られたであろう絶妙なゲーム性、各所でスパルタローカルズ「underground」の音源を使うセンスなど制作サイドの凄さはもちろん、「ななまがり」という芸人の良さも相まって超大作となっていた。
スポンサーリンク
その日の企画は「新元号を当てるまで脱出できない生活」。企画概要をざっくり説明すると、新元号が発表される前日の3月31日にある芸人を俗世から隔離し、外からの情報が一切入らない状況で新元号を当てられるかを試すというもの。スケジュールがガラ空き、2人とも大卒のため漢字の知識がありそう、顔が新元号を発表しそう、という理由で選出されたのがななまがりだった。
今回の企画の中でのななまがりは「ポジティブさ」「誠実さ」「純粋さ」に溢れている。それは企画に対しても、お互い(相方)に対してもだ。
彼らは最終的に正解を出すために98時間40分、921回の解答を行う間、(あくまでオンエア上だが)お互いに対して苛立ちを顕にしたり攻撃的な発言をしたりしていない。(スタジオ登場後に森下の「歯姫」の解答に苛立ちを覚えていたことを白状したがおそらく現場では何も言っていないと思う)
とりわけ感動させられたのは初瀬が出した「来安」という答えに対する森下の発言。
でもいい、いい、俺はいいと思った
当然「来安」は不正解なのだが、「元号としてのクオリティー」という視点で感想を述べたのだ。こういったお互いを肯定する言動が随所に見られる。(「お前の意見いらんやろ」などのプレゼンター麒麟・川島による優しいツッコミもななまがりの言動を際立たせる)
だから「ヒント 松」のランプの光り方から「れん、の音だけ合ってるみたいなこと?」(森下)、「和と非の画数一緒やわ」(初瀬)といったお互いの推理を肯定しながら答えを導き出していくことができる。僕たち視聴者をなんだか薄汚れていない透明なものを観ている清々しい気持ちにさせてくれる。
極めつけは2人で2本目のタバコを吸っていたときに出てきたこの会話。
初瀬 幸せやったんやな、俺たち、毎日
森下 本当にそう、全部よ、飯もさ、風呂もさ
初瀬 売れてないから全然もうアカンわって思ってたけど幸せな日々を送ってたよ
森下 気付かさせてくれたな
普通に聞いたらベタ過ぎて気恥ずかしくなる会話もここまでのななまがりを見ているので違和感なく受け取れる。「ポジティブさ」「誠実さ」「純粋さ」といった言葉にすると胃もたれしてしまいそうなものをななまがりが言動で見せてくれ、そういったものがちゃんと結果に繋がるということを示してくれる。
お互いを信じて、前向きに、正直に、下心なく、日々を大切に。そんなことを「水曜日のダウンタウン」と「ななまがり」から教えられる皮肉っぽさもなんだか面白い。