ゾフィー第5回単独ライブ「まっすぐズレてる」感想 ~世の中に対する代弁者としてのゾフィー、そして愛~

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5月4日(土)にゾフィー第5回単独ライブ「まっすぐズレてる」を観るために渋谷ユーロライブへ。

 

これがどうかと思うくらい面白かった。どうかと思う。

 

ゾフィーを初めて知ったのは恥ずかしながらキングオブコント2017決勝の舞台。お母さんが家を出ていくことによって「お母さん」=「メシ作る人」という息子の価値観が露呈するという設定のコントを披露し、当時フリーだった彼らを決勝後にさらば森田がザ・森東に誘ったがそれを蹴ってグレープカンパニーに所属したところまでを含めて印象深いコンビだった。

 

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ゾフィーが作るコントには常に批評めいた視点が存在する。それはネタを作るほう、上田の視点そのものなのだと思う。そして、その矛先になるべくサイトウが常に自分という存在を消し、常識、普通、一般大衆、正義といった立場につく。シンプルなお笑いの言葉で言ってしまえばボケとツッコミとなるのだろうが、ゾフィーが作るそれには僕たちが言いたくても言えないそんな世の中に対する気持ちを代弁してくれる側面がある。

 

1本目のコント「オーラの告白」はオーラが見える先生に8年間仕えてきた弟子が自分の才能の無さを苦に自殺しようとするところから始まる。その自殺を止めようと先生が言うのだ。

 

おれも(オーラ)見えてない!

 

人間なんて胡散臭いものにしか金払って相談しねえじゃん!

 

世の中の占い師や霊媒師など、彼らはただ単に相談に乗るのが上手いだけの人である。けれどそれだけじゃ人はお金を払って相談には来ないからみんな何かひとつ乗っける。こんな的確な指摘、誰が真っ向から言ってのけられるだろう。ゾフィーがコントにするしかないじゃないか。

 

「謝罪会見」というコントはそのタイトル通り、不倫騒動を起こした腹話術師が謝罪会見をすることになるという設定。腹話術師本人は謝罪するのだが一緒に連れてきた人形の腹ちゃん(ふくちゃん)は言う。

 

ホテルには行ったけど何もしてないんだよね? じゃあ問題無いんじゃない?

 

奥さんには謝って許してもらったんだよね? じゃあ問題無いんじゃない?

 

本当は誰しも思っている「個人の問題であって世の中に対する謝罪なんてする必要ない」という思いを「本人であって本人ではない腹話術の人形」に言わせるという絶妙な設定に衝撃を受けてしまった。そしてそういった設定の妙とは裏腹に腹ちゃん(ふくちゃん)の首、まばたき、足の挙動の異常なまでのコミカルさによって起こる会場の笑い。笑いとは緩急である、の最たるもの。

 

しかしゾフィーのコントはここで終わらない。それらの世の中に対する批評めいた視点の先に「それでも生きていかなきゃいけないじゃないか」という精神が宿っている。

 

「純喫茶 野ばら」というコントは有名なSM小説作家が通ったことで小説ファン(SM嗜好者)たちが聖地巡礼にやってくるという純喫茶が舞台。店主は店にSM色が付くことを嫌う一方でメニューにはSM用語がふんだんに使われ、それを売りにしている。注文が入りサービスを提供すると必ず言う。

 

はあ(ため息)、くだらねえよ。

 

理想は大切である。みんな自分が思い描く理想の通りに生きていきたいのだと思う。でも生きていくためにはそうじゃないことを求められるし、やっていかなければならない場面もある。くだらねえ、と思いつつも。

 

じゃあ結局生きていくためには何が一番大切なのだろう。

 

ゾフィーが最後に「愛、愛、愛」というコントを持ってきたこと、そして今回の単独ライブ「まっすぐズレてる」のコントの数々が上田の箱根での缶詰、事務所のネタ書き独房の中で生まれたということが今になってじわじわ面白くなってきている。

 

▼ゾフィー第5回単独ライブ「まっすぐズレてる」コントタイトル

  • オーラの告白
  • 純喫茶野ばら
  • ピアノ教室
  • 地獄の道化師
  • 怪人、現る!!
  • 謝罪会見
  • 世の中にとって必要ない人
  • 愛、愛、愛

 

※文中のセリフ、コントタイトル、演目の順番はうろ覚えなので正確に合っているかはわかりません