古谷実のマンガが好きです。
最新作「ゲレクシス」で新しい扉を開いた感じありますよね。
途中から何を読まされているのか、どこに連れてかれるのか分からなくなりました。最高。
映画化された「ヒメアノ〜ル」も大好きです。
最初に読むなら絶対に「ゲレクシス」じゃない作品をおすすめします。「ヒメアノ〜ル」「シガテラ」「わにとがげぎす」辺りが良いのではないかと思います。
参考になるかどうか分かりませんが、以前書いた「ヒメアノ〜ル」の感想を転載します。
---ここから2010年5月9日に書かれた記事の転載です---
古谷実のヒメアノ~ルが最終巻を迎えた。
ヒミズ、シガテラ、わにとかげぎすのシリアス路線に続く今作。
退屈すぎる毎日に「このまま一人ぼっちの人生で終わるのか」と悩む岡田。そんな彼が、自分よりも何も無い生活を送ってそうな同僚の安藤さんを夕飯に誘うところから物語は始まる。
安藤さんには片思いの女性がいて、その女性はストーカーに悩んでいた。そのストーカーというのは、岡田の高校の時の同級生の森田君で、彼は人の首を絞めて殺すことでしか性的興奮を感じられない不運な性癖の持ち主だった。
物語は岡田、安藤さん、森田君の3人を軸に進んでいく。
人間の欲には際限がないこと。持って生まれてしまったものへの仕方なさ。何をもってして人は幸せになるのか、価値観の差異。
古谷実が描く物語に薄く、しかし絶対的に存在するのは絶望という下地だ。努力や妥協という層を幾ら重ねていっても拭い去ることのできないその絶望を、時には誰もが理解できるような「あるある」で表現し、時には誰が理解し得るのかというような「異端」で表現する。
読者は、あまりにリアルな登場人物やその設定に「あれ、古谷実ってうちの近所に住んでる?」くらいに驚き、「森田君みたいな奴が近所に住んでてもおかしくないよな」くらいのスリリングさを味わう。その物語にのめり込み、絶望を疑似体験して帰ってくる。そして現実の自分の生活がいかに平穏かを再発見する。つまりはハッピーエンドであることに気付くのだ。
個人的に秀逸だと思ったのは、安藤さんが自分のピュアさを脱却するために、好きでもない36歳独身の山田さんに告白する話。
どこの会社にも絶対にいるであろう、今まで誰とも付き合ったことのない、いわゆるモテてこなかった女性のキャラ設定がずば抜けてリアルで、なぜそこに焦点を当てたのか、どうしてその人のことを知ってるのか、作者に直接聞いてみたいと思わされたのは初めての体験だった。
結果、安藤さんは本当に彼女を好きになってしまうが、地元のお見合いで知り合ったデブでハゲの歯医者さんと結婚してしまうというオチも大好き。
「ヒメアノ~ル」、今の生活が退屈でつまらない、こんな底辺の生活送ってるのって自分だけじゃないか、そんなことを思ってる人はぜひ。あ、ただいっぱい人が死ぬので気をつけて。
---ここまで2010年5月9日に書かれた記事の転載です---
映画も劇場に観に行きました。森田剛が怖かった……。