ベタを巧みに使いこなすニューヨークの笑い

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こんにちは、@haranomachiです。

 

 2016年3月31日よりオールナイトニッポン0が始まったニューヨークの存在が気になっています。

 

というわけで彼らのベストネタライブDVD『THE NEW YORK~Love&Peace~ ベスト・オブ・ニューヨーク』を観ました。

 

 『THE NEW YORK~Love&Peace~ ベスト・オブ・ニューヨーク』は2015年11月21日(土)、12月4日(金)にルミネ the よしもとで行われた「THE NEW YORK~Love~」「THE NEW YORK~Peace~」の2公演を完全収録したDVDです。

 

ニューヨークのネタの特徴の一つに「誰もが思っていることの言語化」による笑いがあります。

 

例えば、「タバコを吸っている高校生を注意する教師」という漫才コントでは嶋佐が普通の不良ではなく「窪塚洋介が演じるタイプの不良」を演じることで笑いが生まれます。これは「窪塚洋介って悪ぶる不良じゃなくてイカれた不良を演じるよね」という誰もが薄々感じていたことをコントを通して言語化しているのです。

 

この「誰もが思っていることの言語化」は「あるあるネタ」とも言い換えられます。しかし、ただのあるあるネタではなく、それをボケとしての使うところにニューヨークの新しさがあるのです。つまり「なんでその不良をチョイスしてんねん」ということです。

 

この「あるあるネタをチョイスすること自体がボケ」という構造はニューヨークのネタではよく登場します。ケンカの仕方がジャッキー・チェンのようなカンフータイプである、ヒットしているJポップの歌詞がクソみたいにダサいということを自覚しつつ作られている、など。

 

しかし、今回のDVDを観ていてニューヨークのもう一つの特徴に気付いでしまいました。それは「なんでやねん」の新しい使い方です。

 

「なんでやねん」は最もオーソドックスなツッコミと言えるでしょう。ボケに対して「なんでやねん」とツッコむことで観客はそのボケの異常さを強く認識することができます。ですが、オーソドックスはイコール「古さ」「ベタさ」とも言えます。誰しもがツッコミであることを認識されたその言葉は安易に使うことが許されない風潮もあるでしょう。

 

そんな中、ニューヨークは「なんでやねん」を使います。その新しい使い方を実際に「最近泣いた話」という漫才を引用することで振り返りたいと思います。

 

(嶋佐には大学の4年間付き合っていた彼女がいたが、芸人になる自分には彼女を幸せにできないんじゃないかという不安、葛藤があり、芸人になると同時に別れた、という前置きがあって)

嶋佐 この前、新宿を歩いていたら「和也くん!」と聞き覚えのある声がしたんだよ。

屋敷 うん。

嶋佐 パッと振り返ったら、そのとき付き合ってた彼女がそこにいたんだよ。

屋敷 えー! めちゃくちゃ久しぶりやん。

嶋佐 偶然、大学卒業して以来だから、もう7年近く振りだよ。

屋敷 ほえー。

嶋佐 そしたらな、その彼女が、ベビーカーに赤ちゃん乗せてたんですよ。

屋敷 あちゃー。

嶋佐 まあまあ、ね。聞いたらね、2年前に職場の上司と結婚して、去年赤ちゃんが生まれた、と。そういうわけですよ。それで、彼女がね、こう言うわけ。「和也くん、私ね、今すごく幸せなんだ。だから、和也くん、もっと頑張ってね。私は、和也くんのこと、たくさんテレビで観れる日が来るのを楽しみにしてるからね。だからもっともっと頑張ってね」この言葉聞いた瞬間に、彼女と付き合った4年間一気に蘇ってきて、それと同時にそこでいろんな感情がぐわあっとこみ上げてきて。

屋敷 うん。

嶋佐 そこで、周りに結構人いたけど、人目も憚らず、思いっきり彼女にディープキスしたんだよ。

屋敷 なんでやねん! なんでやねん!

嶋佐 そしたら彼女におもいっきりビンタされて、それが痛くて泣いちゃった。

屋敷 それで泣いたんかい、おい!

 

 この「なんでやねん」です。どこが新しいの? 普通の使い方じゃないか? と思う方もいるでしょう。ですが、全然違うんです。

 

普通の「なんでやねん」はその前に発せられるボケが主役なんです。「なんでやねん」はそれが間違っていると指摘するための言葉。ですが、ニューヨークの「なんでやねん」は「なんでやねん」を言いたいがために前のエピソードを引っ張っています。つまり「なんでやねん」が主役なんです。

 

実際に観てもらえると分かりやすいのですが、「なんでやねん」が主役になるためには、そのためにある程度長いエピソード(観客がちょっと長いと感じるくらい)が必要になり、かつ、そのエピソードに入り込んでもらう必要があります。そのため、嶋佐が話すことに対して屋敷はかなり丁寧に相槌やリアクションを取っています。

 

最後の「なんでやねん」が最大限に効いてくるように、丁寧に振るんです。これは千鳥の「わしゃすね毛が濃いんじゃ!」のネタにも通ずるところがありますが、それはここでは割愛させて頂きます。

 

「あるあるネタ」と「なんでやねん」。どちらもやり尽くされたと言っても過言ではない手法ではありますが、その使い方に独自性を持たせることで新しい笑いを作り出す。これができてしまうと「もう先にやられてるし」と手法を諦める必要がなくなります。つまり、「自在になる」んです。

 

僕はニューヨークが自在に新しい笑いを作り出していく様をいつまでも見続けたいです。

 

THE NEW YORK~Love&Peace~ ベスト・オブ・ニューヨーク [DVD]

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